正しい姿勢に迷うあなたへ・・今、身体科学が教える「バランスの新常識」
姿勢や体の癖で悩んでいる人はとても多いです。
でも、そのほとんどは「良い姿勢になりたい」「体を整えたい」「もっと動けるようになりたい」
——そういう前向きな気持ちから始まっているんです。
一生懸命に頑張った結果、少しだけ違うところに力が入りすぎて、
本来のバランスを崩してしまう。
そのために痛みや違和感が出ることはあります。
けれども、それは“間違った努力”ではなく、良くなろうとする力がうまく方向づけられていないだけなのです。
だからどうか、自分を責めないで欲しいのです。(いつも現場で思うことです)
悲しんだり、「自分はダメだ」とジャッジする必要はありません。
あなたの体は、常に良い方向へ戻ろうとしています。
それを支えているのが、「恒常性(こうじょうせい)」という力。
つまり、身体も心も「本来のバランスに戻ろう」とする、
生きている限り誰の中にもある自然の働きです。
たとえ今、痛みや不調があっても、
人の身体は「戻ろう」としている。
その力を信じてあげてください。
恒常性は必ずあなたを引き戻してくれます。
悪い方にばかり考えず、「良くなっていこうとする方向」に
そっと意識を向けてみましょう。
何が正しいのか、分からなくなってしまったあなたへ
多くの人が戸惑っているのは、
昔は良いとされていた体の使い方と、
今の身体科学が伝える新しい考え方が入り混じっているからです。
「姿勢を正しくしよう」と努力しているのにうまくいかないのは、
あなたの意志が弱いからではなく、
“情報が古いだけ”ということも多いのです。
たとえば「母趾球神話」。
かつては「母趾球(親指の付け根)でしっかり地面を踏みしめる」ことが良しとされていました。
けれども今では、母趾球に力を入れすぎると土踏まずを潰し、
本来の足のアーチ機能を失わせてしまうことがわかっています。
足の骨格の動きが制限され、結果的に膝や腰に負担をかけてしまうのです。
昔は正しいとされていたけれど、今は再考されていること
ここで、いくつか具体的に見てみましょう。
今では次のような「昔の常識」が、少しずつ見直されています。
① 背筋をピンと伸ばすのが正しい
背筋を張り続けると、脊柱起立筋が過緊張して腰を痛めやすくなります。
本来の“良い姿勢”とは、背骨の自然なS字カーブを保ち、微妙に動き続けている状態。
ヨガでは、山のポーズのように「押す・引く力の均衡」を探ります。
② 肩を後ろに引いて胸を張る
胸を張りすぎると肋骨が開きすぎ、呼吸が浅くなります。
今は「360°に広がる呼吸」が理想。
胸を“張る”より、“広がる”感覚を大切にします。
③ コアを固めて安定させる
体幹を固めすぎると、背骨の動きが制限されます。
必要なのは「使うときに使い、休むときにゆるむ」リズム。
ヨガでは呼吸とともに体幹が波のように動く状態を理想としています。
④腰を反らせて姿勢を良くする
腰を反らせると骨盤が前傾しすぎ、腰痛を招きます。
骨盤は“立てる”でも“倒す”でもなく、中間で自然に揺らぐ状態が理想です。
⑤ 猫背は悪い姿勢
背中を丸める動きは呼吸や自律神経に必要です。
“悪い姿勢”というより、動かないことが問題。
背骨を自由に動かせることが健康の鍵です。
⑥ぴったり揃えて立つのが美しい
足を閉じると骨盤が後傾し、膝に負担がかかります。
自然な安定は、骨盤の幅に足を開くことから生まれます。
(タダアーサナはかかとを離すのでピッタリしません)
⑦骨盤を立てて座る
「立てる」に固執すると腰が張ります。
坐骨と仙骨を感じ、背骨が呼吸で上下に動くように座ること。
静止・ロックではなく、“微細な動き”が良い姿勢を支えます。
⑧インナーマッスルだけを鍛えればいい
部分ではなく全体の連動性が大切。
足裏から骨盤、呼吸筋までをひとつながりとして働かせる意識へ。
⑨姿勢は固定して守るもの
「保つ」ではなく「変化しながら整う」。
人の体は常に動いてバランスを取り戻しています。
ヨガではそれを「スティラ(安定)」と「スカ(快適)」の調和として捉えます。
体は、良くなろうとする方向に向かっています
こうして見ると、
多くの“姿勢の悩み”は、
「正しいと思って頑張ってきた方法」が、
今のあなたの体にはもう合わなくなってきているだけかもしれません。
だからこそ、
「今の体に合う新しい使い方」に出会えば、
驚くほどスッと、痛みや違和感が軽くなることがあります。
そして、何より伝えたいのは、
あなたの体には必ず“戻る力”があるということ。
恒常性という、命が本来持っているバランスの力。
これは、誰にでも備わっている、回復と再生の力です。
もし今つらくても、
一人で抱え込まずに、
正しい知識と信頼できるサポートを受けながら、
少しずつ、使いすぎたところを緩め、
代償していた場所に気づいていけばいい。
あなたは大丈夫です。
人は、本来のバランスへと戻ろうとする力を持っています。
その力を信じて、今日も体と一緒に歩んでいきましょう。
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